研究紹介

当研究室では最長寿齧歯類ハダカデバネズミや近縁のダマラランドデバネズミを中心に、他のいくつかの長寿・がん耐性哺乳類の試料も用いて、長寿・がん耐性動物に共通した、あるいは種特有の、抗がん・抗老化・長寿の機構解明に取り組んでいます。

ハダカデバネズミ(Naked mole-rat, Heterocephalus glaber, デバ)は、 アフリカのエチオピア、ケニア、ソマリアのサバンナの地中で暮らす齧歯類です。 地下の低酸素環境(7-8% O2)と地上の通常酸素環境の両方に適応しています。 マウスと同等の大きさながら異例の長寿(最大寿命37年以上)であり、個体老化の大きな指標のひとつである、加齢に伴う死亡率の増加が見られません(死なないわけではないですが、死亡率が一定です)。また、繁殖能力など、様々な身体機能が、加齢しても低下しにくいことが知られています。これらの特徴から、デバは長寿に加えて老化耐性の特徴を持つと考えられています。さらにデバは、自然発生腫瘍がほとんど認められないという発がん耐性を持っています。また、がんのみならず、アルツハイマー病や代謝疾患などの加齢性疾患への抵抗性をもつことが知られています。

私たちは、2011年からハダカデバネズミの飼育を開始し、現在、国内の研究機関では唯一の飼育機関として、研究を進めています。当初繁殖に苦労しましたが、様々な検討により繁殖法を確立し、現在は約1200匹を飼育しています。

ハダカデバネズミがもつ老化そのものやがん・アルツハイマー病などの加齢性疾患の発症を抑制する分子機構を解明することで、将来的にはヒトにおける加齢性疾患予防薬の開発が期待されます。

ハダカデバネズミなどのいくつかの長寿・がん耐性動物種がもつ耐性の分子生物学的機構について、共通性・相違点の理解と進化学的観点からの考察を深めていくことで、医学・理学・獣医学・薬学・繁殖学などの学問を跨ぐ、「健康長寿・進化医学」の分野確立を目指しています。

研究テーマ

研究材料

当初繁殖に苦労しましたが、様々な検討により繁殖法を確立し、現在は約1200匹以上を飼育しています。


ハダカデバネズミ

和名 ハダカデバネズミ(以下デバ)
英名 Naked mole-rat
学名 Heterocephalus glaber

アフリカのエチオピア、ケニア、ソマリアのサバンナの地中で暮らす齧歯類です。 地下の低酸素環境(7-8% O2)と地上の通常酸素環境の両方に適応しています。 マウスと同等の大きさながら異例の長寿(最大寿命37年以上)であり、個体老化の大きな指標のひとつである、加齢に伴う死亡率の増加が見られません(死なないわけではないですが、死亡率が一定です)。また、繁殖能力など、様々な身体機能が、加齢しても低下しにくいことが知られています。これらの特徴から、デバは長寿に加えて老化耐性の特徴を持つと考えられています。さらにデバは、自然発生腫瘍がほとんど認められないという発がん耐性を持っています。また、がんのみならず、アルツハイマー病や代謝疾患などの加齢性疾患への抵抗性をもつことが知られています。


ダマラランドデバネズミ

和名 ダマラランドデバネズミ
英名 Damaraland mole-rat
学名 Fukomys damarensis

褐色~黒色の短い体毛で覆われ、 頭に白いパッチ模様があることが特徴です。ハダカデパネズミと同様に、目はあまり見えず嗅覚や聴覚に頼って生活し、大きく突き出た前歯を 使った穴掘りによってイモなどの食料を探します。
平均12匹 (最大40匹)で構成される一家族のコロニーをつくって、地下トンネルで暮らしています。ハダカデバネズミと同じく真社会性動物として知られ、 一対のペアのみが繁殖し、 その他の個体(ワーカー) は繁殖をせずに繁殖個体の手伝いをします。 ワーカーの 生殖能力はハダカデバネズミの場合ほど抑えられ ていません。それでもワーカーがコロニー内で繁殖をしないのは近親交配を明確に避ける性質に よるものと考えられていま す。繁殖個体が死んだ場合、コロニーの中で新たに繁殖個体が出現するわけではなく、コロニーは離散します。


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